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  • 銀座環境会議

【レジ袋有料化】エコバッグを買うなら、✖✖✖✖回使って?

更新日:2020年9月14日

前回の記事ではコロナ禍での巣篭り生活で家庭からのごみ排出が増える中、ごみのカサを減らす工夫が果たして総合的に見ても環境に好ましいことなのか検討しました。今回も、日常の中の環境への取り組みを考えてみます。



エコバッグフェア開催中…

7月1日からのレジ袋有料化義務づけまであと1カ月を切り、この話題があちこちで報道されています。各地の百貨店が特設コーナーを設け、”エコバッグフェア”といったものを展開する様子を報じる新聞記事などを目にした方もいるのではないでしょうか。


レジ袋有料化に際して”エコバッグを買う”という行為は果たして本当に環境によいことなのでしょうか。環境への取り組みが、楽しいものだったり、ビジネスに結びついたものであったりすること自体は良いことです。なんでも”地球のために我慢する”というものであっては、多くの人が取り組まないため、結局のところ環境のためにならないからです。


しかし、本当に環境に配慮した行動を取るには、できる限り情報を精査して、きちんとした現状認識を持たなくてはいけません。



エコバッグを買うなら、✖✖✖✖回使って?

2018年にデンマークの環境食品省環境保護機関が発表したレポート「Life Cycle Assessment of grocery carrier bags」(=買い物袋のライフサイクルアセスメント)には、エコバッグがエコとは思えない、驚きとも言える評価結果が見られます。


このレポートでは、「いわゆるレジ袋」とエコバッグや紙袋等の他のタイプの袋の環境負荷を比較しています。もしも、1回だけ使ってその後ごみ袋として利用する、という使い方をした場合、最も環境負荷の小さな選択肢は「いわゆるレジ袋」です。エコバッグを買ってきて1回で捨てるくらいなら、レジ袋の方がましなのは、当然です。エコバッグは繰り返し使うことに意味があります。


では、何回使えばよいのでしょう。そんなことを想像もつかない気もしますが、それを測定するのがLife Cycle Assessmentです。レジ袋を1回使ってごみ袋にした場合に発生する環境負荷を基準としたとき、他の種類のバッグは何回使えば1回あたりの環境負荷が低くなるのか、以下がその回数です。


紙袋:11回

普通の布袋:840回

オーガニックコットンの袋:2,376回


ただし、これは総合的に評価した数字です。”環境負荷”と一言で言っても、様々な側面があります。例えば地球温暖化防止の観点であれば、数字は変わってきます。


紙袋:0回(レジ袋と同じでいきなりごみ袋にしてよい)

普通の布袋:52回

オーガニックコットンの袋:149回


だいぶ穏やかな(?)数字になってきました。149回というと、週3回買い物に行くならばちょうど1年程度です。では、オゾン層の破壊という観点からはどうなるでしょう。


紙袋:8回

普通の布袋:7,069回

オーガニックコットンの袋:19,962回


このレポートは詳細なもので、環境負荷については他にも放射線や海の富栄養化など計14の側面について検討しています。しかし、オーガニックコットンの袋がどうしてこれほどオゾン層破壊につながるのか、その解説はありません。


推測ですが、遠くアフリカで栽培された綿花をデンマークに輸入する想定になっているのかもしれません。また、このレポートについて書かれたある記事では、綿花栽培には大量の水が必要で、その多くが灌漑で賄われるので、そこで消費される天然ガス由来の電力のせいではないか、とされています。Life Cycle Assessment は文字通り生産から輸送、廃棄(リサイクルしてからの廃棄)まで全行程で発生する環境負荷を評価するものだからです。


出典:同レポートより


複雑さを理解したうえで、シンプルな解を求める

レポートでなされている分析は、様々な想定/仮定に基づいたもので、限界があり、執筆者もそれを認めています。一方、評価結果が妥当だとしても、そもそもオゾン層破壊の問題は他の13の側面よりも重要なのか、現在の環境問題で特に焦点となっている事柄なのか、という問いもあります。例えば、今非常に大きな関心を寄せられているのは海洋プラごみの問題です。これを解決するのであれば、プラスチックでない選択肢を取るのが妥当でしょう。しかし、「最大の関心事である」ことと「最重要である」こともまた、必ずしもイコールではありません。


物事はことほどさように複雑です。今回の記事も、プラスチックのレジ袋を推奨するわけでも、エコバッグを使おうという機運に水を差そうというものでもありません。


一つ言えることは、”素材に関わらず、そもそもエコバッグを買う必要がない方がほとんどなのではないか”ということです。家になんらかの袋はないでしょうか。濡れたり汚れたりするのが心配なら、袋の中に過去にもらったレジ袋を2,3枚入れていけばよいのではないでしょうか。普段使っているリュックや書類カバンにレジ袋を常備しておけば、少しの買い物なら間に合うはずです。


これから求められる発想

”どの素材の買い物袋を買うべきか”の前に”そもそも買う必要があるのか”を検討しなくてはいけません。今EUが熱烈に推し進め、日本が乗り遅れていると言われる「サーキュラーエコノミー」という概念があります。様々な視点、技術、態度…を包括する概念ですが、モノを大切に使い続けたり、工夫して使用したり、人とシェアしたりすることで楽しみや交流を生み出す、そしてそれによって生産(=未来の廃棄)を抑制するのも、サーキュラーエコノミーの一部です。


このサーキュラーエコノミーについても近日このブログでご紹介します。


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