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  • 銀座環境会議

気候正義と気候賠償【2】~貧しい国はなぜ貧しいのか~

更新日:2023年1月16日

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そもそも貧しい国が貧しいのはなぜでしょうか。国土が、自然環境が、地政学的に、紛争があって…等々様々な見方があるかもしれませんが、「誰かが貧しいのは誰かが豊かだからだ」ということも言えます。

                    前回投稿より

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ロシアによるウクライナ侵攻で両国産の小麦の輸出に支障が生じ、世界に混乱をもたらしました。日本の食料自給率の低さに鑑みて、地産地消の重要性を改めて感じた方も少なくないと思います。一方、特に深刻な打撃を受けるとされたのはアフリカ諸国でした(※多様性に富んだアフリカ諸国ですが、以下便宜上まとめて”アフリカ”と記します)。


今回の小麦の件に限らず、アフリカに関する報道というと飢餓や食糧問題に関するものは少なくありません。しかし、そもそも農業人口が60%とされるアフリカでなぜ食料問題が起きるのでしょう。道が舗装されていなくても、電気が通っていなくても、農作業の手伝いで学校に通えない子がいても、最低限の食事だけは摂れる、というふうにはなっていない、その原因はなんでしょう。


気候条件や紛争等様々な原因がありますが、家族が食べる穀物や野菜ではなく、特定の換金作物の生産に従事する人が多い、そんな農業の構造に根本的な原因のひとつがあります。例えば、チョコレートの原料であるカカオ豆は、現在でこそコートジボワールやガーナの主要な輸出作物ですが、もともとアフリカ原産ではなく中南米原産の植物です。中南米やアフリカを植民地化したヨーロッパ諸国は、まず現地先住民に、のちにアフリカから連れてきた人々に奴隷労働を強いて、中南米でカカオ豆生産を行いました。それがうまくいかなくなり、19世紀半ばから彼らの故郷であるアフリカで栽培を始めたのです。

出所:https://acejapan.org/choco/childlabour

児童労働の問題も深刻とされるカカオ生産。URLからACEの取組みもご覧ください


こうした経緯で、アフリカの一部の国々では、それまで自給的だった農業生産が、換金作物、輸出作物に偏ったものになりました。価格は市場で決められ、時には価格が暴落することもありますが、生産農家にはまず打つ手がありません(こうした現実に取り組む運動はこちらを参照)。また、それらは原料として輸出されるため、生産農家の取り分はそもそも非常に小さなものです。コーヒーの場合、カフェで売られる価格の3%とも1%とも言われます。大きな利益を得るのは、付加価値を高める加工や販売を行う先進国の企業です。


カカオ豆やコーヒー豆の生産農家は、そうして得た(僅かな)お金で家族が食べるものを買っています。アフリカの人口一人あたり穀物生産量は、アジア・欧州・北米・中南米のどの地域より少量です。イモ類も重要な主食ではありますが、やはり少なからぬ穀物を輸入に頼っています。その輸入元がロシアでありウクライナであるのです。

出所:毎日新聞2022年5月7日朝刊 


こうした歴史的な経緯に基づく要因に加え、アフリカの農業生産、食料安全保障は気候変動で大きな負の影響を受けるとされます。そして、その気候変動の主たる責任を負うべきなのが先進国であることは、前回の投稿で記した通りです。


今回気候変動に起因するとみられる大洪水の被害を受けたパキスタンですが、ドイツの環境NGOによるグローバル気候リスク指数では、1999年~2018年の20年間で最も気候変動の影響を受けた国第5位とされており、既に様々な負の影響を受けてきていました。2022年3-4月には異常な熱波も発生しました。そこにもってきての、さらに大洪水発生だったわけです。


過去に起きたことは変えられませんが、未来を変えること、そして被害を受けた人々を支援することは重要です。このブログを読んで感想(1行でかまいません)を書いてくれる方1名につき500円、銀座環境会議から、一般社団法人平和村ユナイテッドが行うパキスタン被災地での活動に寄付をします(より詳しくはこちらの動画をご覧ください)。


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⇒銀座環境会議からパキスタンの被災地に500円!


※前回ご参加の方も、今回の投稿について感想をご入力いただければカウントします


なお、特定の作物の栽培の強要とそれがもたらす貧困、これはかたちは違えど日本でもかつて起きたことです。”米どころ東北”…今では誰も疑わない既成事実のようになっていますが、稲は熱帯性植物です。なぜ寒冷地である東北が米どころになったのでしょう。今回は紙幅が尽きましたし、銀座環境会議の専門分野でもありませんので詳述はしませんが、ご関心のある方は是非こちらこちらを読んでいただければと思います。






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