前々回、前回と見てきた通り、日本の若者(18歳)はグレタ・トゥーンベリさんの反温暖化の呼び掛けに対する反応は鈍いものの、気候変動は問題視しているし、自分たちを含めた社会全体が取り組むべきと考えています。
一方で、政府・行政や企業の責任を問う姿勢はあまり見られず、「ひとりひとりの意識が大切」が突出しているように思えます。その背景にはなにがあるのでしょう。同じく18歳意識調査の中から、社会や国に対する意識についての調査の結果を題材に、考えてみたいと思います。
日本の18歳は、やはりそれほど環境問題に関心がない?
まず、自分の国の解決したい社会課題についての日本の若者の意識、そして各国の結果との比較を見てみましょう。
以下、出典:日本財団 18歳意識調査 「第20回 –社会や国に対する意識調査-」要約版
これは、各国の政治・社会状況を反映しますので、単純に比較するものでも、優劣を論じるものでもありません。インドで基礎教育がトップなのは納得できる話です。また、このあと見る設問から判断すると、夢を持っていて自分を社会の責任ある一員と見なしているベトナムの若者が、社会を変えられるとはあまり思っていない(それでも日本よりはるかに高いですが)のは、一党独裁政権という同国の政治システムに関係があるのかもしれません。
ただ、先進国と言われる国の中で比べても、イギリス、アメリカ、ドイツでは環境に関わる2点(気候変動対策、健全な海の確保)を解決したいと思う若者が多いのに対して、日本の若者はこの2点にはあまり関心を抱いていないとことは明確に読み取れます。同じく先進国の中で、韓国についても同じことが言えます。実は韓国はこのあと見る「自身について」の6項目のうち5項目で日本の次、ビリから2番目だったり、全体的に日本に似た傾向の調査結果が出ています。
日本の18歳は、自分にも他者にも期待が低い
次に、自分と社会についての5つの設問についての結果を見てみましょう。
これは、なかなかに衝撃的と言ってもよいのではないでしょうか。全ての項目において、最下位、それも、”ぶっちぎりの”最下位と言って差し支えないでしょう。これは、”若者特有の社会に対して斜に構えた態度”といった類のものとは思えません。やはり多数の国の若者を対象にした別の調査でも、「自分は価値のある存在だと思う」といった設問に対して、日本の若者は非常に低い数字で最下位になっています。
次に、自国の将来についてです。
こちらも”ぶっちぎりの最下位”です。イギリスは唯一「悪くなる」が日本より多いですが、これについては、調査時期に鑑みるとEU離脱が関係しているかも知れません(若者には残留派が多かった)。そのイギリスでも、良くなると考えている若者も少なからずいます。彼らが、あえて言えば”たった18年”の人生の中で、ここまで自国について悲観するに至ったのであれば、これは大人の問題でしょう。
次に、「どのようにして国の役に立ちたいか」です。
日本が2位に差をつけて1番なのは「国の役に立ちたいと思わない」という項目です。「今は国家国家という時代ではない、もっと地域コミュニティを良くしていく時代だ」という考えもあるでしょう。しかし、「住んでいる地域(コミュニティ)の課題解決に取り組む」の低さを見ると、そういう考えの若者が多いわけでもないようです。全体として、右2つ(”役に立ちたいが具体的な分野はわからない”そして”役に立ちたいと思わない”)を除いてどの項目も低いのです。
期待がなければ、声も上げない?
これらの結果から、日本の若者の間で気候問題に関するデモなどが盛り上がらないこととの関連で、なにが言えるのでしょう。類推の域を出ませんが、韓国との類似性に鑑みても、社会や国に対する意識と環境に対する意識に関連性を感じます。自分の未来にも、社会にもあまり期待していない若者は、地球規模の問題に関心を示さないし、大人たちに対して「私たちのために素晴らしい未来(=環境)を守れ」と声を挙げることもない、そういったこと言えるのかも知れません。
言い換えれば、大人たちが環境問題に対して真剣な取り組みを見せることは、彼らへのメッセージにはならないでしょうか。
良くも悪くも、政府や企業に対して声を上げるより「ひとりひとりが」の精神が強い若者たちは、ではいったい環境のためになにをしているのでしょう。次回は同じく18歳意識調査から、若者の環境に関する取り組みを検証します。
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