これまで見てきた通り、日本の若者(18歳)は自分たちには責任がなく、受ける影響は大きいにも関わらず、温暖化を始めとした環境問題について他者を批判したり、大人たちになにかを”要求”したり、”抗議”したりすることには熱心ではありません。そして、その背景には「自身を含めた社会に対する期待の低さ」が関係あるのかもしれない、ということを「18歳意識調査」の様々な結果に基づいて見てきました。
そんな彼らはしかし、環境問題について捨てばちになっているわけではなく、多くは「自分たちのできることはやっていかなければ」という意識を持っています。今回は、実際の取り組み、行動に関する18歳意識調査の結果を見ていきます。
以下、出典:日本財団 特別編 18歳意識調査「テーマ:環境について」要約版
教育やメディアはやはり重要
パリ協定や、海洋ごみの問題についての認知度はとても高いようです。パリ協定は2015年と最近ですが、調査対象の世代は教科書で目にしています。2019年の10月に松戸市の「消費生活展」にて来場者にSDGs(持続可能な開発目標)について聞いてみる機会があったのですが、大人の間の認知度はほぼゼロでした。知っていると答えたのは、大学生、高校生ばかりでした。こちらも教科書に載っており、一部の県では公立高校の入試で出題されています。
海洋ごみの問題は、やはりプラスチック問題を中心に大きく報じられることも多いので、認知度が高いのでしょう。別の設問に「環境省について」というものもあり、あまりイメージがないという回答も非常に多いのですが、小泉進次郎大臣の名前を挙げる人は多少いました。
環境問題に限りませんが、彼らの年代では一部の人を除いて自分から様々なことを調べるにはまだ至らず、その準備段階と言うべきか、与えられる情報によって土台を形成しているという人たちも少なくないでしょう。やはり教育やメディアが重要なことが再確認できます。
身近な取り組みも熱心
次に、環境に関わる彼ら自身の行動についてですが、日常の中でごみの分別を筆頭に、様々な取り組みをしていることがわかります。ごみを出さないようにする、約5%、ペットボトルを買わない2%、数字にすると小さいようですが、大人たちの行動を見ていて、ペットボトルを買わないようにしている人が50人に1人いるかどうか、かなり怪しくはないでしょうか。
また、マイボトルに絞った設問でも、彼らの高い実践意欲がうかがえます。7人に1人は既に持っていますが、これも大人に比べて高いのではないでしょうか。そして、今後の意向として持つ意思がある人を加えると、実に85%以上がマイボトル携行に肯定的です。
”高いレベル”からスタートする若者たち
「今後の意向」については100%額面通りに受け取るわけにはいかない面はありますが、総じて今の若者は古い世代と比べて”高いレベルからのスタート”になっている面はあるのではないでしょうか。
かつてのごみの分別は相当大まかなものしかありませんでした。ごみの分別が厳しくなったとき、”面倒だ”とか”前は楽だったのに”とか漏らす大人は少なからずいました。それに対して、この調査の対象の若者たちは、物心ついた時からペットボトルの本体とフタとフィルムを分けて捨てています。
かつては病院の待合室でタバコが吸えたと知ると、この世代はにわかには信じません。信じられないのです。環境問題に限らず、マナー、セクハラ、体罰…様々な面でこの世代は”高いレベルからのスタート”をしています。
”怒れる若者”ではなくても、環境問題に取り組む下地はある彼らです。教育やメディアだけでなく、周囲の大人たちを含め、どんなものに触れてどんな人と話すかによって、より意識を高めていくのではないでしょうか。そしてその先には、グレタさんの呼びかけにも呼応して、健全なる批判精神をもって大人や社会に抗議する若者も出てくるのでしょう。
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